カトリック仙台教区 司教 マルチノ 平賀徹夫
人間は神によって神の似姿である人格として創造されている、という理解がキリスト教の人間観であるわけですが、今の社会でその人格・人権がどれだけ尊重されているでしょうか。人が人として尊重され、大切にされる社会、大切にし合う社会をいつも目指したいと思います。教皇フランシスコは書いています。“現代ではすべてのことが、強者が弱者を食い尽くすような競争社会と適者生存の原理のもとにあります。…(『福音の喜び』53)。
当委員会は2004年、私の前任者、故・フランシスコ溝部脩司教により発足しました。当初は課題として女性の人権、子どもの人権、外国籍の人々の人権、現代医療に関連する諸問題、が列挙されました。時が移るにつれて、課題がどんどん増えていくようです。
今まで当委員会で取り上げてきた主な課題は、まず「外国籍の人々の人権」で、検討の結果、「ヘルプデスク」を立ち上げることを一応の結論としました。この課題は今も継続してあり続けます。
次いで扱った大きな課題はハンセン病問題。仙台教区内にはハンセン病の国立療養所が二か所にありますが、この問題について学ぶうちに、特に1907年の法律「らい予防ニ関スル件」以降、隔離政策が始められ、罹患者に対する大変な人権侵害が国を挙げて行われて来た事実を知りました。1998年、元患者有志が「隔離政策で人権を侵害された」と国家賠償を求めて提訴、2001年に熊本地方裁判所が「隔離政策は違法」とする判決を下し、国は控訴を断念して確定。2009年には「ハンセン病問題基本法」が施行されましたが、被害者の「最後の一人まで安心して暮らせるか」の不安は消えていません。
仙台教区は東北の太平洋側4県ですが、その中にも細かく見ればそれぞれの歴史があり、土地柄があり、それぞれに人権にかかわる問題もありましょう。人が人として尊重され、大切にし合う社会へと進みたいわけですが、人を無視し人権を損なう方向への動きがある、あるいはその恐れがありそうな場合、すぐそれと感じ取る敏感さを養いたいものだと思います。
このたび、当委員会ではホームページを開設しました。このホームページが、皆様に、当委員会を知っていただくため、また、人権問題についてご理解いただくとともに、ハンセン病問題などに関心をもっていただく一助となることを願っております。
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